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カルテ4『子供達』 本物
克美さんの機嫌が良い、ような気がする。いつも柔和な笑みを浮かべているので、なんとなくそうだ、としか言えないけれど。
気になる。ただそれだけだったのに。
手は触れていない。慈恩さんに渡す書類を受け取っただけ。それだけで、私は菖蒲さんの部屋に居た。克美さんが菖蒲さんに覆い被さってキスをしている。体格に物凄く差があるので、大人の男が幼女を押し倒しているような、禁断の光景にも思えた。
「じ、じらさないで、もっと、」
菖蒲さんが、雪弥さんの時とは全然違う。
「あ、あっ、克美さん・・・」
弱火で焦がすようなじれったさを、菖蒲さんは感じていた。
「あぅ」
するり、と白い足の間に手が伸びる。
「菖蒲さん、一度、気を遣りましょう」
「挿れて、挿れて・・・」
「あとでね」
克美さんは意地の悪い笑みを浮かべた。菖蒲さんは甘く甲高い声をおさえられなかった。ああ、そっか、克美さんって人魚を守る海の王様だったんだっけ。人魚達に乞われてこんなことを。だから女性経験豊富で、女性の扱いに慣れていて、子沢山なんだ。海には克美さんの血脈があるんだ。碧君は、菖蒲さんにとっては最初の子供で、克美さんにとっては最後の子供。
「うぐっ、うあっ・・・」
「痛くないですか?」
「少し、待って・・・」
身長差にフェティシズムを持つ私にとって、この光景は刺激が強過ぎた。いけないとはわかっていても、顔を真っ赤にしながらも、見入ってしまう。
「『アレ』、してあげましょうか」
克美さんの提案に、菖蒲さんは恥ずかしそうにしながらも頷く。つちゅ、つちゅ、と小さな水音が響く。菖蒲さんが喘ぎ始める。
「淫乱ですね」
克美さんも興奮している。それも、酷く。
「ち、ちがぅ」
「綺麗ですよ」
菖蒲さんの眼帯が取り外された。目蓋は閉じられ、痛々しくも黒い色で縫われている。克美さんは身を屈めて菖蒲さんの右目にキスを落とすと、細い左手の、細い手首を掴んだ。私はどきっとした。克美さんの握力なら簡単に折れてしまいそうだったからだ。手首を菖蒲さんの首に押し付け、床に板で打ちつけたように固定する。そして、右足を持ち上げて、身体を強烈に揺さぶり始めた。
「おや、もうですか」
克美さんが手を離す。菖蒲さんは手荒に扱われて、興奮して、絶頂を迎えていた。
「も、もっと・・・もっとぉ・・・」
「真樹さん、書類を先生に届けたら薬剤師さんのところに行ってください」
「は、はい!」
にこり、と柔和な笑みを浮かべる克美さん。戦う時は鋭く恐ろしい克美さん。菖蒲さんと二人っきりの時は、にやりと笑う克美さん。一体、どの克美さんが本物なのだろう。
どれも本物、か。
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