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遼太郎
かくしてあれから早いもので三週間が経ちました。
旅の5日間はまるで夢を見ていたよう。
自分は仕事の毎日を送っており、苺郎は卒業式まで高校に行く用事もないようで、せっせと弁当工場へとバイトに赴いています。
日本に連れてきた遼太郎はと言うと。
なにしとるんじゃ、神様。
すっかり我が家が気に入ってしまったらしい遼太郎は、シヴァの置物の姿をやめ、うちの次男、蕪人と同じ年齢の男児になって毎日一緒に遊んでいます。まあ、楽しくやってくれてるんならいいけど。
ホントに。神様だというのに。
「なあ、おっさん。で、どうなの?当たった?」
「また外れた。もしかして俺ブラックリストに載ってるのかな」
今日は非番日。
蕪人は小学校、家内はパート、家の中は遼太郎と自分二人きり。
遼太郎と自分との共通の関心事はやっぱり櫻坂46。
3月に全国を回るアリーナツアーのチケットが当たらないのだ。ファンクラブ一次先行、二次先行もだめ、オフィシャル先行に今回のイオンカード先行でも外れた。最近は安定の落選。
「どうにかならんのか?おっさん」
「どうにもなんないよ、それこそ神頼みしたい」
「神頼みって、あんなあ。俺、何度も言ったけど」
「うん」
「例えばな、受験生が神頼みして希望校に受かったとしても、それ、俺のご利益じゃないからな。ご本人が頑張ったんだよ。俺は何にもできない」
「そうだね」
「じゃ。神の存在意義とは」
「存在意義とは?」
「そばにいるとちょっとうれしくね?楽しくね?」
「まあ。そうだな。いないとちょっと殺伐」
「そういうことだよ、おっさん。俺は世の中の潤滑油」
「なんかに似てるね」
「アイドルだ」
「うん」
「当たらんかな、コンサートチケット。そもそもそれを見るために日本に来たんだ」
ききー
その時、家の庭の方から甲高い叫び声が聞こえたのだった。
おいでなすったか。
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