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家事代行サービス・ブラウニー
朝の光がカーテンから漏れ出て、次第に
部屋を照らしていき、鳥がさえずっている。
一階から、ほのかにミルクの匂いが
ただよってくることから、おそらくだが、
小さなお隣さんが朝食の支度をしているのだろう。
(そろそろ、起きなくちゃ、やばいかな。)
まだ、あまり機能していない脳に、春の
温かい空気を送り込み、深呼吸をして、
ベッドから立ち上がった。
ごく普通の柔らかい、ハシバミ色の髪を
三つ編みに編んでいると視界が段々と、
はっきりしてくる。瞳と同じ若草色の
ワンピースに、皮のベルトを巻くと、
もうすでに用意してあるであろう朝食の
匂いがする一階に向かった。
「ああ、やっと降りてきたか、ねぼすけは
相変わらずか。レニー。」
私の髪と同じ、ハシバミ色の長いふさふさの尻尾と目が隠れるほどの長い髪を揺らし、
手元はせわしなく動いている。
通称、ブラウニーと呼ばれる主に家事全般を
こなしてくれる妖精だ。ただし、妖精の
名前は妖精達が呼ばれるのを嫌うので、
「お隣さん」や「隣人さん」と呼ばなければ
ならないのだ。
そして、もう一人、何も喋りはしないが
いつも笑顔で家事をこなしてくれるのが、
シルキーだ。髪は私と違い、真っ白で肩までの長さに切りそろえてある。
手にベリーの枝を持っているので、庭の木の剪定をしていたのだろう。
私がぼうっとそんなことを考えている間にも
ブラウニーの手は止まらない。
次々と、洗濯物がたたまれていくのを横目に
私は朝食を食べ始めた。
ミルクのパン粥は、お腹が温まるので
ほっこりしていると、一匹の猫が窓を
叩いた。
首元には手紙がくくりつけられている。
私は猫から手紙を受け取り、
「ありがとう、もうお戻り。」と言うと、
元気よく鳴いて草むらに消えていった。
「何の手紙だ?レニー。」
「仕事だよ。ルーメン劇場の猫さんからの
ようだ。少し依頼をしたいらしいよ。」
私がそう言うと、ブラウニーは家事を
シルキーに任せ、出かける用意を始めたので、私も朝食をいそいで胃におさめた。
今から、私達は『家事代行サービス・ブラウニー』のレニーとブラウニーとなる。
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