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ゾーイが俺の目を見てきっぱりと答えた。
「私は冒険者になるの! 旅をして色んなことを知りたくて。これは、その第一歩よ!」
「──そんな……軽装備で?」
「初っ端からお説教ね。いいわ、冒険者ですもの。受けて立つ!」
と、スプーンをナイフか何かに見立てて、顔の前にかざしている。
違う、そうじゃない、と軽くスプーンに触れ下げさせる。
何だか楽しそうだけど、どうしてくれよう。きみに冒険はまだ早い、なんて言ったが最後、反発されるに決まっている。
ふと、自分が呪い師になると言い出した時のことを思い出した。獣人が? できるはずないよ、なんて言葉を浴びせられる中、一人だけ違う事を言ってくれた人がいた。
「なあ、ゾーイ。冒険は楽しい?」
「すっごく」
「もっと冒険したい?」
「当たり前よ!」
「じゃあ、今回の冒険はここまでだ」
え? という顏のゾーイに俺は滾々と説いた。要約すると、冒険を続けたいならそれなりの準備をせよ、という話だ。
「俺の言ってることわかるか?」
「……私は、そこに何があるかを知りたいだけなのに」
「ゾーイはどうして何があるかを知りたいんだ?」
やや間を置いて、ゾーイが口をひらいた。
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