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「ママの助けになりたいから。私でも悪霊を退治できる方法があるかもしれない。私、ママみたいに賢くなくて。でも、役に立ちたくて。反対されるから一人で出てきただけで。本当はチームの仲間に入れて欲しい。が……頑張ったね、って褒めて欲しくて」
ぼろぼろ零れる言葉と同時に、ゾーイの目から大粒の涙が溢れていた。
頭を撫でてやりたくなったけれど、それはあまりに気安い気がした。
「ゾーイはよくやってるよ」
ほんとう? という目でゾーイが俺を見る。
「まだ七歳だろ、頑張り過ぎてるくらいだ」
悪霊なら俺が退治してやるから、と言いかけてやめた。ゾーイが望んでいるのは、そんなことではない。
「俺は冒険者にはなれないけれど──ゾーイが冒険者になったら、いつか一緒に悪霊を退治しよう。だから、力をつけておいで。今日はもう遅いから──明日、機械の国へ帰るんだ。あの石のところまで送ってやる」
ゾーイがぐしぐしっと目を擦った。
顔を上げて笑う。
「いいなぁシリウスは」
「俺が?」
「悪霊を退治して、一人で立派に生きてる。私もシリウスみたいになりたい」
その言葉に、不意打ちをくらったようになった。
見ないようにしていた気持ちの蓋が開く。
俺は、本当は戦士になりたかった。だけど、俺よりも力が強く槍がうまい獣人はいくらでもいた。他の獣人より変に感覚が優れているせいで、余計な苦労をしたことは数知れない。呪い師を目指したのは、流れに身を任せた結果と言えよう。
好きでこんなふうになった訳じゃない。
だけど、今、こんなにも胸の奥が温かい。
曖昧に笑って返すと、ゾーイが不思議そうな顔になった。
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