始まりの決意

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 祐希は食器を片付けた後、意を決してある提案を子供にした。 「一緒にお風呂入る?」  子供はキョトンとした。それはそうだろう。祐希だって非常識だと思う。  だが、子供の肌や着ている服の状態、そして漂ってくる糞尿の匂いが混じった異臭がしたかことから、おそらく長い間、お風呂に入っていないと思われたのだ。  家に帰しても入れてもらえるかわからなかったし、それなら祐希が入れた方が良いだろう。  幸い、家にあるシャンプーやボディーソープは家族向けの肌に優しいものだ。子供が使っても問題はないと思う。  女性向きのシャンプーを買う勇気がなく、だからといって男性向けのものも嫌だったから、結局間を取って性別関係なく使えるものを買ったのだ。それがここで役に立つとは思わなかった。 「ほら、こっちおいで」  祐希が呼びかけると、子供は意外と素直について来てくれた。  途中でバスタオルなど必要なものを取り、2人は脱衣所に入る。 「服、脱がすね」  祐希は子供に一言かけてから、薄汚れたシャツを脱がそうとした。  だが、生地がカピカピになっている上に、腕が引っかかってなかなか脱がせない。 「あ、ばんざーい」  腕を上げさせればいいことに途中で気がついて呼びかけるが、子供は首を傾げるだけだった。 「……腕上げてくれる?」  そう言い直すと、今度は腕を水平に上げてくる。  間違ってはいないが、これでは服を脱がせられない。 「あ、そうか、ばんざーい」  今度は言いながら、祐希も一緒に腕を上にあげる。 「ばん、ざい?」  子供も真似して、今度は腕を上にあげた。  その隙を見逃さず、祐希は素早くシャツを子供から抜きとる。  頭でつっかえて、子供が足をドタドタ上下させたが、何とかシャツを脱がすことに成功した。
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