始まりの決意

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始まりの決意

 まだ雪がちらほら残る春の始め、笹原祐希は、買い物帰りに公園のベンチで休んでいた。  一人暮らしとはいえ、調味料や米などがあると重い。  ただでさえ、あまり力のない祐希は疲れていた。  ロングコートがシワにならないように座って、一息つく。  ふと、肩にかかる髪が目につき、苦笑した。  この髪は祐希自身の物ではなく、偽物の髪、ウィッグだ。本来の祐希の髪は短い。  コートの下はロングスカート、靴は短いヒール、化粧をした中性的な顔も相まって、祐希は女にしか見えないだろう。  だが、祐希は男だ。  戸籍上も、身体的特徴も男なのだ。  ただ、心だけが、なぜか、女なのである。  昔はそのちぐはぐな心と体に悩み、あえて男らしく生きようと行動したこともあった。  だが、それはただストレスを貯めるだけだった。  大学に行き、一人暮らしを始めた時、祐希は本来の自分を解放することにする。  とはいっても、休日に女性の格好をするだけだが。  それでもずっと窮屈な格好をしているより何倍も気楽だ。  社会人として働くようになった今でも、平日は一般的な男性を演じ、休日はこうやって本来の姿に戻ることを繰り返している。  そんな自分がどこか滑稽で、顔が苦笑いみたいに歪んだ。  その時、視界の隅で小さな何かがよぎる。
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