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それは小さな子供だった。
その姿に、祐希は目が離せなくなる。
まだ肌寒いというのに、薄汚れた薄手の衣服。
袖からあらわになっている腕は骨しかないかのように細い。
伸び放題の髪はぐちゃぐちゃで、肌にはできものがあった。
ふらふらしてて、よたよた歩く姿はおぼつかない。
祐希がじっと見ていると、石にでも躓いたのか、コテンッと転んだ。
「ふぇっ……」
泣きそうな甲高い声を聞いて、祐希は慌てて子供に近寄る。
「大丈夫!?」
祐希がしゃがんで声をかけると、子供は涙を浮かべた大きな目を、こちらに向けた。
「ママ?」
期待を込めた眼差しが祐希を見て落胆に染まる。
「ママ、どこぉ?」
泣きながらキョロキョロして母親を探す姿に、祐希の胸はぎゅうっと苦しくなった。
「君、お母さんは?」
祐希は子供の目をしっかり見て、優しく声をかけるが、猫なで声になってしまう。
祐希は内心舌打ちしたくなった。これではただの変質者ではないか。
泣きながら子供は首を横にブンブンと振る。
「じゃあ、お父さんは?」
今度は、子供は「むー」と唸った。
とりあえず、両親は近くにいないようだ。
さて、どうしたものかと考えていると、子供は小石を口に入れようとしている。
「ダメ!」
祐希が慌てて小石を取り上げると「ひぅ」と子供はまた泣きそうになった。
「……ちゃんとおいしいお菓子あげるから、私のお家に行こうね」
無理やり笑顔を作って微笑みかけると、子供は泣き止んでコクンッと頷く。
涙が止まったことにほっとした祐希は、子供に気づかれないようにそっと息を吐くのだった。
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