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(どうしよう……)
祐希は頭を悩ませていた。
勢いで自分の住んでいるアパートの一室に連れてきたが、客観的に見れば大人の男が幼い子供を家に連れ込んでいるのである。通報されてもおかしくはない。
そんなことは露知らず、子供はテーブルの前に座って、キョロキョロと物珍しそうに部屋を眺めている。
祐希の部屋は1Kで玄関から続く廊下がキッチンになおり、その奥の8畳ほどの部屋にちゃぶ台みたいな小さなテーブル、ベッド、本棚、思い切って買った鏡台などが置いてあった。
「はい、これ」
祐希は子供の前に皿に載せたおからクッキーを差し出した。
本当は常備しているチョコレートやクッキーをあげようかと思った。だが、もしかしたらアレルギーがあるかもしれないと考えると、迂闊に出せなかったのである。
考えに考えた末、以前買った値引きされていたおからクッキーになった。
子供は目を輝かせてクッキーを手に取ろうとする。
「あ、ちょっと待って」
祐希は慌てて、テーブルの上のウエットティッシュを取り、子供の手を拭いた。
泥で汚れていた子供の手は柔らかく、祐希は皮膚を傷つけたり、骨を折ってしまわないか、内心ヒヤヒヤした。
「はい、これで大丈夫。もうい食べてもいいよ」
祐希は子供ににっこり笑いかける。
子供は許可が降りると、素早くおからクッキーに手を伸ばして食べ始めた。
夢中で食べる姿を眺めて、もしかしたら飲み物もあった方がいいかもしれないと思い立ち、祐希は飲み物を取りにキッチンへと向かう。
残念ながら冷蔵庫には牛乳以外の飲み物がなかった。ガラスや陶器も危ないかもしれないので、苦肉の策で唯一プラスチックでできていた歯磨き用のコップを軽く洗って水を入れる。
部屋に戻ると、おからクッキーはなくなっており、子度の口の周りには盛大に食べかすが付いていた。
「たくさん食べたね。水、飲む?」
祐希が聞くと、子供はコクンッと頷く。
コップをテーブルの上に置くと、子供が早速手を伸ばした。
だが、上手く取れず、コップを倒してしまう。
「あちゃー」
ついおどけてそう呟いた祐希だが、必要以上に体を縮めて震え出した子供を見て、大きく目を見開いた。
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