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「ごめん、なさい、ごねんな、さい……」
子供は怯えながら、舌足らずな言葉で謝り続ける。
祐希は衝撃でしばらく固まっていた。
こんな小さな子が、ここまで震えるような経験をすることがあって良いのだろうか?
(虐待――)
子供を初めて見た時からちらついていた文字が現実味を帯びる。
「ごめ、んなさい、ご、めんな、さい……」
子供がまだ謝り続けていることに気がついて、祐希ははっと我に返った。
惚けている場合ではないと、自分の頬を軽く叩く。
そして腰を低くして、震えている子供に目線を合わせた。
「怒っていないから、大丈夫だよ」
「え……」
子供は目を大きくして固まる。
祐希はにっこりと笑った。
「こんなの拭けばすぐにきれいになるから、君は気にしなくて大丈夫だよ」
祐希は台拭きを持ってサッとテーブルの上を拭く。
「ほら、元通りになった」
笑いかけるとと子供も釣られて笑ったため、祐希は内心ほっとした。
「水、また持ってくるね」
コクンッと子供が頷いたので、祐希はコップを持って台所で水を汲む。
持ってきた水をコクコク飲む子供を眺めながら、祐希は胸にある決意を固めていた。
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