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穂澄はその姿に一目で胸を射抜かれて
「名を教えてください」
胸をそらしている子狐に聞いていた。
するとわらべの姿で、顔を真っ赤にして困ったように俯いてしまった。
「我は……我の名は……まだ、ない」
「そう、ですか。では私が君に名づけてもいいですか」
「名づけられてやっても……いいぞ……」
小さく答えてくれた。
穂澄は少し上を向いて思案した。
「真代(ましろ)と、いうのはどうでしょう?」
子狐は驚いたように目を開いて、それから泣きそうな顔で頷いた。
「気に入らなかったら別の名を考えますが」
「違う……気に入らなかったんじゃない! うん、我は、真代だ!」
潤んだ目で子狐が、真代がまっすぐ穂澄を見た。
「我は真代だ」
真代と穂澄のやり取りをいつの間にか、、かたずを吞んで成り行きを見つめていた子狐たちが歓声をあげた。すると「我も名づけて!」と穂澄の周りを子狐たちが囲んだ。
「そこまで!」
時定が一喝した。子狐たちがおとなしくなる。
「今日は山菜を採りにきたんだろう。名づけはお前らが一人前になってからだ」
時定が言ったが、子狐たちはソワソワしている。
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