第二話「平安の野狐と白蛇」

6/9
前へ
/73ページ
次へ
一晩目の夜。 妖狐たちの宴を抜け出し、野狐と白蛇は荒代と数匹の妖狐を連れて、国司の館付近に居を構える史生(ししょう)と呼ばれる下級生役人を殺した。 二晩目。 昨夜と同じ顔ぶれで、宴を抜け出してきた。 四等官(しとうかん)の目(さかん)を殺した。 三晩目。 同じ顔ぶれで、同じく四等官の掾(じょう)を殺した。 四晩目。 同じ顔ぶれで、同じく四等官の介(すけ)を殺した。 五晩目。 いよいよ国司の館に入り、下男を殺した。 六晩目。 次に国司の娘の侍女を殺した。 七晩目。 今晩は国司を殺す。 荒代と十匹の妖狐が国司の館の闇内に姿を潜め、他の妖狐は総出で館を取り囲んだ。 夜半を過ぎて、野狐と白蛇が忍び込む。 これだけ国司の周囲で人死にしているのに、館がやけに静かではないか?  警戒した野狐だったが、遅かった。  異変が起こった。妖したちが、館の闇内を移動できなくなっていた。黒染めの法衣を纏った僧が、野狐と白蛇の前に立ちはだかった。どこぞの高僧のようだ。  高僧の仲間が他に五人いた。館の庭で二人は囲まれていた。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加