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「これでも狐たちが、ここ数日で修繕してくれていたんだ」
「ここの人たちは……」
呆然とする穂澄の横で、時定が、あちこちを建てつけている人々を見渡して告げた。
「おまえらに紹介する。俺の主、穂澄だ。ここの寺の僧なのは知っての通りだ。起き上がれるようになったから連れてきた」
「これはこれは穂澄さま。私は妖狐の一族の長、一〇二代目の『荒代』と申します。こちらの建物の修繕はお任せください。大工に化けておりますので、人間に怪しまれることもないでしょう。我ら全力であたります」
代表して答えたのは、好々爺然とした、どこからどう見ても人だった。
「荒代さん……」
もしやここにいる者すべてが狐か、と問おうと時定を見上げると
「さすがに狐のままの姿では、木槌は持てんからな」
いや、問題はそこじゃない。
自信満々で時定が胸を張っている。
時定によると、暴動が起きてからたった数日で、負傷した穂澄を残し、神宮寺のすべての僧が逃げ出した。皆、棄仏し、下位僧は還俗して農民になり、要職にあった僧は神職に鞍替えしたらしい。
『昨日は読経した口で、今日は祝詞をあげている』
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