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「子狐たちが山で山菜を採ってきてくれたのですよ、今夜は『精進揚げ』です」
と、教えてくれた。
ふきのとう、タラの芽、うど、わらび、ぜんまい、コシアブラ、こごみ。
どれもサックサクの衣で苦味も美味かった。精進揚げを口にして感動している穂澄に
「寝てばかりでは体も萎えるというもの。穂澄も明日、子狐たちと山に入って山菜を採ってくるのは、どうだ? たまには少し足を延ばしてみては」
時定からの提案に
「子狐たちと……それはいいですね!」
と二つ返事で穂澄は約束した。
翌朝、神宮寺の周辺地域では比較的、険しい山とされる麓に、時定と子狐たちに案内された。山景を見上げて穂澄は口を開いた。
「もっとこう……気軽に入れる低山を想像していました」
予想と違う山道の入り口に立つ。
子狐の中では少し体の大きな子が言った。
「毎日、同じ山からばかり採るわけにはいきませんから」
体力面で不安がある穂澄は眉をさげて
「そうですね、今日は皆さんの足を引っ張らないように、気をつけます」
と、頭も下げた。
「今日は俺がいるから、心配ない」
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