16人が本棚に入れています
本棚に追加
時定が、心配している穂澄を見つめる。しばらく時定に見つめられたまま、何か言わねば間が持たない、と穂澄が息を吸い込んだとき、子狐たちが騒がしくなった。
「穂澄さまを先導するのは、我だ!」
「我も!」
「いいや我だ!」
と言い合っている。
一匹、その輪に加わっていない子狐がいた。ツンと横を向いて耳を伏せ、尻尾を立てている。
時定が白銀の髪をガシガシかいて
「あーもう収集つかねぇ。穂澄に決めさせるからな」
子狐たちを𠮟る。
騒いでいた子狐たちが、ならば、とキラキラした瞳で穂澄を見上げてくる。
「誰になさいますか、穂澄さま……」
ほぅ……とため息をつくように穂澄を見つめている子狐たち。そんな目で見られると、よけい決めにくくなる。
「じゃぁ、そこにいる子にします」
穂澄は輪に加わらずにいた子狐に声をかけた。
「なんで我が、変化もできないやつなんぞを先導しなければならないんだ」
ふさふさの尻尾をぼわっと膨らませて、歯を剝いた。それにはかまわずに、穂澄はその子狐の目線の高さに合わせて、しゃがみ込んだ。
「君は変化できるのですか?」
「できる!」
最初のコメントを投稿しよう!