第三話「子狐に名を送る」

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 時定が、心配している穂澄を見つめる。しばらく時定に見つめられたまま、何か言わねば間が持たない、と穂澄が息を吸い込んだとき、子狐たちが騒がしくなった。 「穂澄さまを先導するのは、我だ!」 「我も!」 「いいや我だ!」  と言い合っている。  一匹、その輪に加わっていない子狐がいた。ツンと横を向いて耳を伏せ、尻尾を立てている。  時定が白銀の髪をガシガシかいて 「あーもう収集つかねぇ。穂澄に決めさせるからな」  子狐たちを𠮟る。  騒いでいた子狐たちが、ならば、とキラキラした瞳で穂澄を見上げてくる。 「誰になさいますか、穂澄さま……」  ほぅ……とため息をつくように穂澄を見つめている子狐たち。そんな目で見られると、よけい決めにくくなる。 「じゃぁ、そこにいる子にします」  穂澄は輪に加わらずにいた子狐に声をかけた。 「なんで我が、変化もできないやつなんぞを先導しなければならないんだ」  ふさふさの尻尾をぼわっと膨らませて、歯を剝いた。それにはかまわずに、穂澄はその子狐の目線の高さに合わせて、しゃがみ込んだ。 「君は変化できるのですか?」 「できる!」
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