みんな違うよお前だれ

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みんな違うよお前だれ

 中学生の頃から強くを意識し始めた。  小学生までは「みんな違ってみんないい」精神を刷り込まれてきたのだが、中学校に入ったあたりから「みんな違うよお前だれ」とゴロを合わせるならそう問われているような気がした。何よりも規律を重んじろ、列を乱すな、足並みを揃えろ。そう言われているようだった。  何が好きで、何が嫌いで、何が得意で、何が不得意で、何ができて、何ができなくて。何が、何が、何が、と常に自分という人間を解剖することを強要されているように感じた。  加えて、不鮮明をいいことに、将来への脅しまで完備している始末だ。不安を煽ることに長けた大人たちの暴虐武人ぶりったらありゃしない。  個を強く求めるのは自分だけでいい。他人から個を求められるのは間違っている。他人から求められて表出した個は個でなく、個人だ。誰かから見た私、個の人。偽ることもできる、いわば世に忍ぶ仮の姿。そうではなく、心中のみ秘める真の自分。嘘偽りのない素直な気持ち。それこそが個であり、それを意識するべきである。  だから、誰かに強制するような、そんな大人だけには絶対になりたくないなと思いましたマル—— 「マル、じゃねぇよ」  ダンと机を強くたたかれ、ヒュエッと変な息が漏れた。思い切り仰け反って椅子の背もたれに寄りかかり、逃げるように身を縮めた。寒気が走ったのは、季節が冬だからだろう。今年は雪超多いし、教室なんてめっちゃ寒いし。 「あのなぁ、こんなこと言いたくはないんだけどなぁ」 「じゃあ言わなければいいじゃないですか。無理は禁物ですよ」 「じゃあ無理せずに手を出すぞ。グーチョキパー肘膝足どれがいい?」 「言葉で伝えるって大事ですよね、さんにーいちどうぞ」  二つの意味で手のひらを返して発言を促す。「はぁ……」と先生は今日も溜息王子だった。  母の弟の娘の旦那さん。絶対的に君臨する母の言いつけにより、教育委員会無視よろしくばりの教育的暴力。真人間になることを強要され、不自由な学校生活を強いられている私は今まったく身に覚えのない罪で詰められている。こんな人が教育者を名乗っていいのか。反語案件だ全く。 「なんでこんなことをしたんだ?」  机の上に置かれた一枚の紙。端がちぎれていて、真ん中も8割くらい破けてぐしゃぐしゃになっている。上の方には『(ほり) みかん』と書かれていた。 「なんでって、ゴミだからに決まってるじゃないですか」 「ゴミなのは認める。否定はしない。だけど俺が言っているのはそこじゃない。なんで学校の、ましてや校長先生の部屋に忍び込んでゴミ箱に入れたのかを聞いている」 「先生、テストとはつまり、ハンバーガーです」 「……続けろ」  先生は諦めたとばかりに肩をすくめて椅子の背もたれに寄りかかる。そして足を堂々と組み、がんを飛ばしてくる。
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