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死者には花を、生者には希望を
「おじさん、墓参りするなら花を買っていきなよ」
ジョンは持参した花束を見せた。
「もう持ってる」
彼は花を売る少女を横目に目的の墓まで来た。
ーー失った愛は死に隔たれここに眠る。
ーーリア・ブラウン 1956.8.7ー1964.9.16
最愛の一人娘リアは、自宅のプールの事故で死んだ。
8歳だった。
その日ジョンは汚れたプールを清掃しようと水を抜いていた。
だがその最中に職場から電話がかかってくると、仕事の内容で言い争いになりプールのことなど忘れた。
その間に娘は排水口にはまり、帰らぬ人となった。
完全に自分の不注意だ。
ジョンは自分を責め、妻とは離婚した。
それから10年。
今日も彼は墓前に立つ。
「俺も、もうお前の所へ行こうか」
ジョンは花束を墓前に置くと、帰宅しようとした。
門をくぐる寸前、あの花売りの少女が墓地へ入っていくのが見えた。
娘と同じくらいの背格好だろうか。
ジョンはなんとなく彼女を目で追い、そしてリアに供えた花を持って行くのが見えた。
「おいガキ、お前俺の花を盗んだろう?」
「だって死んだ人に花をあげてもしょうがないでしょ?だったら私が有効に使ってあげるよ」
「…勝手にしろ」
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