陛下への挨拶

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 私は精一杯の笑顔で感謝の気持ちを伝えた。陛下は目を見開いた後、表情を和らげて微笑みながら「良き夫に巡り合えて良かった。今宵は楽しむが良い」とお言葉をかけてくださった。  「ロザリア、行こう……」  テオ様が手を差し出してくださって、私はその手を取り、階段を下りる。テオ様は終始穏やかな顔をされて、挨拶を終えた私を労ってくれた。  「緊張しただろう?頑張ったね」  「……はい。陛下にきちんと感謝の気持ちを伝える事が出来て、安心しました。今の私があるのもテオ様と、陛下の温情があったからこそですから……」  リンデンバーグに沢山の民を殺された恨みを持っている者も少なからずいると思う。陛下だってリンデンバーグの人間に良い気持ちは持っていないでしょうし……しかも私は王族。そんな人間を国に迎え入れるというのは、とても抵抗があったはずだわ。  それでも許可してくれたのは、テオ様を信頼してなのかどうなのかは分からないけど…………だから私はどうしてもお礼を言いたかった。  今日それが出来て、胸の痞えが少し取れた気がするわ――
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