サロンで楽しくお喋りするはずが…

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 私は驚き、思わず立ち上がってしまった。私の母国の茶葉?この給仕係の男性は何を言って……リンデンバーグは敗戦国として、どこの国との取引も制限されているはず。私は王族としての扱いを受けてこなかったから、こんな茶葉があるだなんて知らなかったけど……王宮で使う物として仕入れるわけがない事くらい分かる。  安眠効果…………安眠………………  「まさか、このお茶に何を……………………」  「……それはあなた様が知る必要はないかと」  男性がそう言った瞬間、私の意識がグラッと回り椅子へと倒れ込む…………給仕は私をすぐに抱きかかえ「さぁ、母国へ帰りましょう。国王がお待ちです」と呟いた。  倒れた時の衝撃で、私の首に着けていた15歳の誕生日にテオ様から贈られた首飾りは、シャランと音を立てて床に落ちる――給仕はお構いなしに私を布でぐるぐる巻きにして隠し、その部屋から持ち出そうとしていた。  
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