妻の為に… ~テオドールSide~

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 入念に体をマッサージしたり、肌の手入れをしたり、爪や髪の手入れ…………一緒のベッドに眠っていてもいい匂いがして、耐えるのが大変だった記憶しかない。  でも初めての夜会だし、きっとロザリーの事だから私の為に真面目に一生懸命頑張っているのだろうなと思うと、手を出してはいけない気持ちの方が大きくて、理性を保つ事が出来た。  ダンスのレッスンを少し覗いたら、ロザリーを気遣う講師にもっとレッスンをしてほしいと言うロザリーを見て、芯が強く、負けず嫌いなのだと感じた。でもそうでなければ、あのような国で生き残る事は出来なかったのかもしれないと思うと…………複雑な気持ちだった。  私はロザリーの為に最高級のドレスを用意した。デザインにも関わって、彼女を女神のような装いにするべく密かに着手していたのだ。  そのドレス姿を見た時、目が眩んだ――――――私の妻はなんて美しいんだろう――――本来ならドレスなど着ていなくても十分美しいのだけど、それでも…………自分が制作に関わったドレスを着ているという事がより一層美しく思わせてくれる。  そんな美しい妻を誰にも見せたくない衝動に駆られる。
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