失踪した王女殿下

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失踪した王女殿下

 ガタンガタンと揺れ動く……何かに乗せられているのかしら…………私は一体どうして――――――  少しづつ意識が戻ってはきたものの、まだ頭はボーッとしたままだった。この揺れが若干心地良いような…………次の瞬間ガタンッと大きく揺れて、驚いて目が覚めた。  目の前は真っ暗――――明らかに舞踏会じゃない。私はステファニー様とサロンでお喋りをしようと、先にサロンに行っていたはず。そして…………そこに運ばれてきた給仕係の男性が入れたお茶を飲んだところで、男性がそのお茶の茶葉はリンデンバーグ産だと告げて――――  きっとあのお茶には眠り薬が入っていたに違いない。それを飲んでしまって意識が飛んだのね……手は縛られ、体は頭まで布でぐるぐる巻きにされている。  つまり身動き出来るような状態ではない、という事…………私はどこに連れて行かれるのかしら………………私が意識がなくなる寸前に「さぁ、母国へ帰りましょう。国王が待っています」という声が聞こえた気がする………………まさかリンデンバーグ?    どうしてリンデンバーグが私を攫う必要があるの?  もう私は用済みのはずなのに――――  そんな事をモヤモヤ考えて身動ぎしていると、誰かが私の顔にかかっていた布を取り払ってくれた。  その人物の顔を見上げると、私は驚いて目を見開く…………目の前に誘拐犯と同じ服装をしたレナルドがいたのだから。  「………………どうして、あなたがここに?」  「…………シーッ…………あなたが連れて行かれるところを見て、こっそり誘拐犯になりすまして荷馬車に乗り込んだのです……荷馬車の連中は御者以外は寝かせています、安心してください」  「レナルド…………ありがとう。それにしてもあなたは何者なの?」  「…………申し遅れました、私は国王陛下直属の護衛騎士です。普段は表に出る事はないので、私の正体を知っている者は王族の方以外はほとんどいません。旦那様に一時見破られそうになった事もあったのですが、なんとか解雇されなくて良かったですけど」  庭師だったと思っていたお兄さんが、国王陛下直属の護衛騎士…………  「どうしてそんな方がベルンシュタットのお城に?」  「…………旦那様があなたを妻に、と進言した事は知っていますよね?」  「ええ……」
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