本棚に入れたままだった日記

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本棚に入れたままだった日記

 自室に幽閉されて手持ち無沙汰だった私は、ほとんど物のない自室を見渡してみた。  本当に何もない…………好きで読んでいた本が本棚に並べられているくらいで、質素な木の机とベッド、少しの洋服くらいで年ごろの女性らしい物など何もなかった。  でもベルンシュタットに嫁ぐまではこれが私の日常で当たり前だったのよね……嫁いでからはベルンシュタット辺境伯夫人として、何不自由ない暮らしを送らせてもらっていたから、自分がどれほどテオ様に甘やかされて……愛を与えてもらっていたかを実感する――――  ベルンシュタットでの生活が恋しい。豊かな生活がしたいんじゃない。エリーナやベルンシュタットの皆、ステファニー様やヒルド様、テオ様が…………本当に良くしてくださったから。皆に会いたい。    連れ去られた事は不本意だったけど、レナルドも来てくれて、それに――――きっとテオ様が来てくださると信じているから。  落ち込んでいる場合ではないわね。
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