本棚に入れたままだった日記

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 ――――体が思うように動かない。息も苦しいし、私はもう長くはないかもしれない。ロザリアだけでもボルアネアに渡せたらいいのに……でもそうなったらあの男が激怒して大きな戦が起こる。私はあの男と血縁関係はないけどロザリアは娘だから、返せと迫ってくるでしょうね……愛情なんて持ち合わせていないくせに。  戦と言っても殺し合うのは王族ではない、民よ。ここの王族にはそんな事どうでもいいんだわ……どうしてこんな悲しい事になってしまったの。    祖国があまりにも遠くて……――――      日記がそこで終わっていた。  私はお母様の日記を嫁ぐ時に持って行かなかった事を激しく後悔した。持って行ってあげれば良かった…………きっと帰りたかったわよね。  知らず知らずのうちに涙が溢れてきた。私がお母様の足枷になっていた事、そしてきちんと大事にされていた事……私は日記を抱きしめて声を殺して泣いた。そのまま泣き疲れていつの間にか眠ってしまっていた――――  ~・~・~・~  眠りから目覚めてふと窓の外を見ると、日は傾き、夕方になっていた。
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