地下牢を脱出

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 牢番は意外と親切で、手の平に水を注いでくれたので、一日ぶりに飲み物を飲んで生き返ったような気分だった。  「……ありがとう、とても助かったわ。あなたは雇われてここにいるの?」  「…………そうだ。この国にはもう働く場所はない。王族はこんな状態でも贅を尽くしているが、俺たち平民は働くところもなければ満足に生活をする事も出来ない。何か仕事があれば何でもするさ……」  私にこんな話をするのは嫌でしょうね。この人がどのくらい事情を知っているか分からないけど、民に罪はない。こんな生活を強いてしまって、王族として生まれた者として罪悪感が募る――  「こんな王族のところで働くなんて反吐が出るけどな……家族もいる。金もないから他所に行ったところで生活出来ないのは同じだ……」  「…………ごめんなさい」  「あんたが謝る事じゃない。この国はもう終わったも同然だ……国の行く末を見るもの悪くないと思っている」  「…………………………」
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