人を消す理由、消さない理由。

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人を消す理由、消さない理由。

 その日。五年一組の道徳の授業は、一風変わったものを取り入れていた。  というのも先生がプロジェクターを出してきて、あるアニメを見せてくれたからである。表示されたOP映像とキャラクター画像に、クラスからは“おお”と声が上がった。  何故ならそれは、世界的にも有名なあの青い猫型ロボットのアニメだったからである。少しレトロなOP映像と、それからYouTubeかどこで見たような気がする古風な主題歌が流れる。  タイトルは、“のび太は独裁者?!”だった。あれ?と私は首を傾げる。なんだか既視感を覚えたからだ。以前、配信か何かで見たもののような気がする。タイトルは微妙に違うが。 「これは、ドラえもんファンの間でも有名なお話です。皆さんの中には、リメイク版の“どくさいスイッチ”の方を見たことがあるという人もいるかもしれません」  タイトルで一度停止ボタンを押す芦田先生。  私達の担任、芦田英子(あしだえいこ)先生は今年で四十二歳。よくよく考えれば、先生が幼い頃からドラえもんという漫画、アニメは存在しているのだと思い出す。  なんとも凄い話だ。声優が交代になったり、主題歌が変わったりしながらもアニメも何十年と続いているのだから。それだけ、ドラえもんという作品がみんなに愛されているということなのだろう。 「今回の道徳の教材は、このドラえもんのアニメを使います。皆さんには、今からこのお話を見てもらいます」  教室の隅から小さく“やったあ”という声が聞こえてきた。多分男子だろう。普段のつまらない授業より、アニメを見る方が何倍も楽しいに決まっている。ましてや、ドラえもんが好きな子は学校にも多いだろうから尚更に。  私もドラえもんは好きだが、少しだけ眉間に皺を寄せていた。道徳の授業でただ、このアニメを見て終わりということはあるまい。ならば次、考えられることは一つだろう。 「このアニメを見て、皆さんが思ったことを作文にしてもらいます。全員、原稿用紙二枚は書いてくださいね」 「ええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」  案の定。  作文と聴いた途端、小さな歓声は悲鳴に変わったのだった。
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