1.怪奇現象毒見係

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 父がまだ働いているとは言え、それに頼って実家に引きこもってばかりいるのはあまりにも情けなかった。それを頭では理解しているが、どうすればいいのか皆目見当がつかずに現在(いま)に至っている。貯金はすでに底をついていて、やっかいな異形の出現を理由に、ニート生活を満喫しすぎていた感はある。 「だよなぁ。これからどうしよう……」  思わずそう漏らすと、着ている黒いパーカーの袖からニョロンと鰻のような頭が飛び出し、残念そうな顔でこちらを見つめた。俺の第二の式神、『龍蜷(りゅうけん)』である。 (龍蜷までそんな目で見るなよ……)  瞳から逃れるようにコタツの上に置いていたスマホを取り、何となく画面をいじっていると、突然けたたましい着信音と共に画面には着信相手が表示された。そこには、『桃塚(ももづか)虎我(たいが)』とある。 「もしもし?」 『もしもし! きいっちゃん? 今家?』 「あぁ」 『じゃあ、ちょっと交番まで来てくれる?』  虎我は、以前近所の公園で子供の霊と喋っているところを職質してきた、交番のお巡りさんだ。冤罪で捕まりそうにはなったが、事件に協力したことから妙に懐かれてしまっている……というか、それ以来完全に利用されている。 「じゃあって何だよ」 『だってきいっちゃん、どうせ暇でしょ?』 「暇じゃないかもしれないだろ!」 『またまたぁ。詳しくはこっちで話すから、とにかく来てよ。お願い!』  「しょうがないな…」と呟いて通話を切ると、おもむろに外へ出る支度を始めるのだった。
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