誰か気づいてよ!

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誰か気づいてよ!

 太陽の温度が心拍数を上げて、蝉の鳴き声が僕を急かしているように聞こえてくる。僕は自分の見た目に自信がない。だから、髪型を変えて学校に行くときは非常に緊張する。なぜなら、誰にも気づいてもらえないからだ。例えば、僕が極限まで伸ばして、ショートな女の子くらいの長さくらいになったとする。それを一気にツーブロックにする勢いで借り上げても、誰も気づいてくれないだろう。ぼくは正直、非常に悲しかった。なぜなら、坊主か、五輪にしないと、誰からも気づいて貰えそうにないからだ。だから、今回こそは誰かに気づいてもらう。  そういう意気込みで教室の扉をガラガラと音が立つように開けて、教室を大きく回って自分の席に座る。朝礼前でクラスのみんなはほぼ全員いる状況。全員の視線が一度僕に集まる。そして、最前列の友達の反応は? 「おっ、そら。おはよう。」 『ふざけんな!結構大胆に5センチくらい切ってきたんだぞ!5センチって言ったら、お菓子のブラックなサンダーくらいの長さはあるんだぞ!お前ら、毎日食べて来ただろ!』   僕はどこにもぶつけることのできない思い、手帳に殴り書きする。  まあ、これがいつも通りか…………僕は無気力に自分の席に座り、机の中に教科書をしまう。すると、静かだった教室がざわつき始める。まさか、僕の髪型が変わっていることにみんな気づいたのか?しかし、それはあくまで願望だった。現実は…………。 「ヒナタさん髪の毛切っている!めっちゃ可愛いじゃん!」  クラスの男子が一斉に騒ぎ始める。僕とは真逆に、視線を避けるかのように、僕の隣にスッと座る。僕は髪の毛の詳細を確かめるために、挨拶をする。 「おはよう!ヒナタさん」 「気安く話しかけないで…………」  僕は悲しい気持ちを文字にして、消化する。 『酷い!せっかく隣の席になったんだから、もっと優しくしてくれたっていいんじゃない?なんで、そんな酷いこと言うかな!』  すると、僕の右ポケットがスマホの着信のように振動する。ちなみにこの振動音は誰にも聞こえないみたいだ。だって、友達と会話しながらなっても、誰も聞こえていなかったから。 『高校生活初めての友達と話すの慣れてなくて、緊張しちゃうから』  あ~~~クソ。可愛い。でも、なんでヒナタさんは2ミリくらいしか髪の毛を切ってないのに、クラスのみんなが騒ぐんだよ!あまりにも不公平すぎる…………。  世の中の残酷さを目の当たりにして、机にうつぶせる。すると、再度右ポケットが振動する。 『もしかして、ソラ君髪型変えた?』  え?ヒナタさん!僕が髪を切ったことに気づいてくれた。流石は僕の初めての女友達なだけはある。そうか~~~ヒナタさんだけは気づいてくれるのか~~。嬉しいな~~~。  こうなったら、言葉で!ヒナタさんの口から、髪型変えたんだねの言葉を聞きたい。 「ヒナタさん!今日の僕っていつもと違わない?」 「はぁ?人にものを訪ねるなら、まずは自分のそれ相応の態度を魅せるべきじゃないかしら?」  ルンルン笑顔の僕。その表情は太陽を見るヒマワリのようだった。対するヒナタさんは少しばかり不機嫌そうだった。すると、右ポケットが振動する。 『私が髪型変えたことに気づいてない?ねぇ、早く気づいてよ!』  いや、僕は絶対に先を譲らない!今まで誰にも気づいてもらえなかったんだ!今日くらい僕に誰よりも早く指摘してくれる人がいてもいいだろ!それにヒナタさんはクラスのみんなが気づいているからもういいだろ!  すると、僕の友達がやってきて、ヒナタさんに話しかける。 「ヒナタさん、今日いつもよりもかわいいね!あっ、髪型変えたんだ!」 「黙って」  完全に心をへし折られて、しゅんとなり帰っていく友達。今のヒナタさんの返事はいつも以上に棘があったな…………。 『ソラ君にだけ、気づいてほしかったのに~~~』
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