きみが隣に

3/11
前へ
/11ページ
次へ
「すごい……」 テストの成績上位者が貼り出されて、四位に瀬尾が入っている。 「なに見てんの?」 「瀬尾」 隣に瀬尾が並んで、俺の視線の先を辿る。 「テストの成績上位者? こんなのあるんだ」 「知らないの?」 「知らなかった」 興味がないということかもしれないけれど、それもすごい。 「復習は苦手とか言ってたくせに、四位じゃん」 今まで意識して瀬尾の名前を上位者の中に探したことがなかったけれど、もしかしたら毎回上位に入っているのかもしれない。俺は上位に入ったことなんて一回もない。 「苦手だし、たまたまだよ」 「『うげ』とか言ってたもんね」 「そう、うげ」 ははは、と笑った瀬尾は、自分の頭を指さして今度は真面目な顔をする。 「テスト前日にがーっと勉強して頭に詰め込んで、当日は覚えた内容が落ちてこないように頭を揺らさず登校するの。それで解答用紙に書きながら忘れていくっていう……」 「どこまで本当?」 「全部ほんと。やってみな」 俺の頭を軽く小突く瀬尾がいたずらっぽく笑うから、つられて笑ってしまう。 「やってみる」 うん、とひとつ頷いて瀬尾を見ると目が合った。 「矢崎のそういう素直なとこ、いいよな」 「え?」 瀬尾が柔らかく微笑んで俺をまっすぐ見つめてくる。 「笑顔が可愛いんだから、いつも笑ってろよ」 そんなことを言われたのは初めてで、どきどきする。俺が笑うとき、瀬尾が隣にいるんだろうか。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加