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溺愛じゃおさまらない
「年下の男をひたすら可愛がる心境ってどんなの?」
ずっと気になっていたことを聞いてみる。
陽介さんは俺の髪を撫でる手を止めない。
「心境? 『可愛すぎる』」
「プライベートでしか可愛くない?」
「仕事でも誠也はたくさん頑張ってて可愛いよ」
「へー……」
ほんとかな。
そんな風に思っているなんて微塵も感じられないくらい仕事中の陽介さん…市川課長はめちゃくちゃ厳しいけど。
「納得いかないって顔してるな」
「……うん」
「どんなときも誠也は可愛いよ」
「ほんとかなぁ」
いつだってかっこいい陽介さんと、いつでも平々凡々、普通な俺。名前を聞くとたぶんほとんどの人が『ああ、あの会社』と言うくらいの、それなりに知られた文具メーカーの企画管理課にいながら企画が通ったことは一度もない俺と仕事ができてみんなの憧れの陽介さん。
でも、告白は陽介さんからだったりする。基本的な仕事しかできない俺をどうして?って思ったから断ったんだけど、すごく真剣に何度も気持ちを伝えてくれて、その真剣さに惹かれていってちょっと怖いけれど頷いた。
なんでちょっと怖いかって、会社での陽介さんしか知らなかったから。付き合ったらプライベートでも厳しくされるんじゃないかってびくびくした。けどそんなことはなかった……というより愛されすぎなくらい。
「誠也が飲みたがってたビール、ネットで見つけたから買っといた」
「え、あったの?」
地域限定のビールで、一度飲んでみたいと思ったんだ。それも、陽介さんと一緒にネットでビール紹介の記事を読んでいたときに見たんだけど。
「冷やしてあるから後で飲もう」
「すぐ飲みたい」
「すぐはだめ」
唇が重なった。舌が滑り込んできて、甘いキスに心が溶けていく。寝間着代わりのティーシャツの中に陽介さんの手が入ってくる。肌をまさぐられて、それだけで身体が跳ねてしまう。指先が胸の尖りをとらえ、すりすりといじる。じんじんと淡い快感が腰に走って陽介さんが着るシャツを掴んで握り締めた。
「なんでそんなに可愛いんだ…」
「あっ」
突起をきゅっとつままれる。
可愛くなんてない。でも陽介さんの目には俺はとてつもなく可愛く映っているらしい。変なの。
熱を燃やす愛撫に蕩けながら陽介さんをじっと見る。綺麗な瞳。肌を滑っていた手が腰を滑り、ハーフパンツの中に入ってきて期待が膨らむ。秘蕾の周りを指でなぞられ、小さく声を上げると陽介さんがまたキスをくれた。
「ん、ぁ…」
熱い舌の動きに翻弄されて力が入らなくなっていく。
「……ベッド行くか」
「…うん…」
横抱きにされて寝室に運ばれる。ベッドに下ろされて寝間着をするりと取り去られた。シャツを脱いだ陽介さんが覆いかぶさってきて、あちこちにキスを落としていく。唇が触れる度に欲が湧き上がって血液を沸騰させる。くらくらするようなキスに酔って陽介さんを受け入れる。
「誠也、可愛い…愛してるよ」
「んっ…ああっ…!」
こんなにどろどろになるくらい愛されて、俺は本当に幸せ者だ。
会社の誰も知らない、優しい陽介さん。俺だけの陽介さん。
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