溺愛じゃおさまらない

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「ごめんね、陽介さん…」 「ものすごく傷付いたからな、責任取って慰めろ」 甘いキスに瞼を下ろすと、せっかくかけてくれたタオルケットがどかされた。そういえば服、着てなかった。 「こんな格好してるとこ、俺以外に見せるなよ」 「うん…」 肌の上を滑る手の動きにぞくぞくし始める。熱い視線が全身に絡みついて、手を伸ばして陽介さんの首を撫でて引き寄せる。 「陽介さん…キス、して」 「どこに?」 「……全部に」 「オーケー」 ちゅ、ちゅ、と肌にキスがひとつ、ひとつと落ちてくる。キスをしながら陽介さんがネクタイを外してシャツを脱ぐ。綺麗な身体が露わになっていってどきどきする。 「……やっぱりキス、もういい」 「止めたいなら止まれること言ってみろ」 止まれることって…なに。 「…早く抱いて」 願いをそのまま口にすると、キスが止んだ。顔を上げた陽介さんの瞳の奥に欲情が揺らめいていて、くらりとする。唇が重なり、肌をなぞられる。舌を吸われて軽く歯を立てられて、腰に鈍い快感が響く。 「ようすけさん…はやく」 「こんな誠也が見られるなら、たまには喧嘩もいいな」 「……けんかなんて、してない」 俺が勝手にひとりで拗ねて意地の悪いことを言っていただけ。 心をすくい取るようなキスに必死で応える。陽介さんの舌と吐息の熱さに頭がぼぅっとしてきた。自分で足を開いて、陽介さんの手を奥まった部分にいざなう。秘蕾をなぞっていた指がゆっくり挿入ってきて、中に触れる。 「ん……」 気持ちいい場所に触れられたわけじゃないのに、快感が突き抜ける。指の小さな動きを感じ取って全てを悦楽へとすりかえる。期待もどきどきも申し訳なさも、全部悦びに。 いつもより恥ずかしいのに、足をもっと開いてしまう。陽介さんは小さく笑んで俺をじっと見ている。その頬が上気しているのがとても色っぽい。 「……誠也をもっと知りたい」 くっと指がいつもの場所に触れる。身体が跳ねて声が止まらなくなった俺を、この上ない宝物のように陽介さんは見つめ続ける。その視線にも乱されて、快感が身体の内側で暴れ、渦巻く。 指が増やされ、更に中をいじめられる。 「ああっ…あ、だめ…!」 ひとりでイきたくないのに、陽介さんは執拗にそこを責める。昂りがだくだくと透明の液を零し、張り詰めて限界を訴える。 「ようすけさん…だめ、はやく…」 「早く、なんだ?」 「……いれて」 いつもなら恥ずかしくて言えないようなことがするっと口から出た。陽介さんは軽く目を瞠ってから微笑む。ほぐされた部分に熱いものが触れて、それだけで腰が揺れてしまう。 恥ずかしいのに恥ずかしくない。早く欲しいと全身で伝えたい。押し開いて挿入ってくる昂りの熱さと大きさに蕩けた声が出た。 「誠也…キスをくれ」 「うん…」 少しずつ挿入ってくる。陽介さんの頬を両手で包んで唇を重ねる。 「もう一回」 「ん…」 もう一回キスをする。中がいっぱいになった。 「はやく、うごいて…きもちよくして」 陽介さんの腰に足を絡めると、陽介さんが苦しそうな表情をする。もう一度キスをしたら、呼吸もできないようなキスで返された。 「ん…あ…っ、ああっ!」 ゆるゆると動く陽介さんがいきなり奥を突いた。びりびりと痺れる快感に仰け反ると、胸の突起を口に含まれる。その小さな快感も、確かに快感で。軽く歯を立てられたらじんじんと昂りまで欲情が伝わる。 「ああっ……あ、あっ! あ、んんっ…!」 「誠也…愛してる」 甘い囁き。耳にキスをされて、吐息で鼓膜まで蕩ける。頬やおでこにキスが落ちてきて、陽介さんの背にしがみ付く。 おかしくなりそうなくらい気持ちいい。 渦巻いた快感が竜巻のように暴れて俺を呑み込む。気持ちいいしかわからなくて怖い。陽介さんは俺をじっと見ている。俺も見つめ返すと、噛み付くようなキスと激しい律動が与えられた。 「―――っ…!!」 呆気なく達した俺を、陽介さんがすぐにまた追い詰め始める。快感に支配され、脳が陽介さん以外の全てを忘れてしまう。ただ陽介さんを感じて、陽介さんを受け入れる。 「だめ、だめ…! そこだめ…っ」 「ここ、好きだよな」 「あっ…ああ…っ!」 弱いところを擦られて目の前がチカチカする。陽介さんがキスをくれるけれど、キスに応えられない。気持ちよすぎて応え方がわからない。感じるのは陽介さんだけ。 陽介さんが俺の左足を持ち上げ、肩にかける。奥の深いところまで繋がって、陽介さんの知らないところなんてもうどこにもないのに、陽介さんは更に俺を知ろうと動く。 濡れた音と陽介さんの息遣いが耳に響いて、脳も蕩ける。骨がぐだぐだになるほど全身溶かされて、深くまで知られていく。 「っまたイく……イくっ……!」 「…誠也…っ」 ぐっと一際深いところまで陽介さんが挿入ってきて、快感が弾ける。どくんと中で昂りが欲を吐き出すのを感じて力が抜けた。荒い呼吸を交換するようにキスをしていたら、中の熱がまた硬さを持ち始めた。 「ようすけさん…」 「……悪い、無理させる」 「ああっ……あっ!」 続けてすぐに陽介さんが動く。動きながら胸の突起までいじるから、頭がおかしくなる。 「だめ…やだっ」 「やめるか?」 「やっ…」 やめないで、と首を横に振ると、尖りを刺激しながら奥を穿たれる。じわじわとなにかが湧き上がってきて、ぱちんと爆ぜた。 「誠也、イッたか?」 こくこくと頷くけれど、いつもと違い、気持ちよさが終わらなくて、じわじわとまたせり上がってくる。すぐにまた爆ぜて、身体が波を打つように震えた。快感の竜巻で内臓がぐちゃぐちゃになってしまったかのように体内がおかしい。陽介さんが俺の腰を掴んで、奥へ奥へと迫ってくる。 「だめ、イく…っ、ぅあ…!」 一回イくごとの衝撃が強すぎて、視界が滲んでくる。涙が止まらない俺の中で、陽介さんの昂りが一層膨らむ。 「可愛い、誠也」 「よ、すけさ…っ、ああっ…! あ…あ」 「…っ…く」 また快感が爆ぜた余韻で力の抜けた声が出てしまう。中で陽介さんが二度目の欲を放ったのは同時だった。 抱き締め合うと心がほぐれていく。消えたかったのが嘘みたいに、陽介さんの腕の中にいたい。俺からキスをすると甘く応えてくれた。吐息まで全部、陽介さんを呑み込みたい。 「誠也は可愛いな」 「…可愛くないよ」 「一生懸命俺の隣にいてくれてるんだ。可愛くないはずがない」 評価まで甘い。今は陽介さんだからな。市川課長だったら絶対あり得ない。 「すごい溺愛っぷり」 「違うな」 「? そう?」 かなりの溺愛具合だと思うけど。 「溺愛なんて言葉じゃ収まらないくらい誠也が愛おしいよ」 「超えちゃってるの…」 「そうだ」 自慢げに微笑む陽介さんのほうが可愛くて、抱き締める腕に力をこめる。汗でぴったりくっついた肌が、もっとひとつになりたいと言っている。 「たとえば俺が本気で『別れて』って言ったらどうする?」 「俺がそんな言葉を聞き入れると思うか」 「思わない」 「それが答えだ」 嬉しくてつい笑ってしまうと、鼻をつままれた。やめて、ともがくと鼻の先に唇が触れる。 「誠也が溺愛程度でいいなら、そうするが」 「できるの?」 「できないな。できるわけないだろう」 「陽介さんが言ったくせに」 陽介さんがおでこをくっつけてくるので、目を閉じる。 「…傷付けてごめんね、陽介さん」 ばかな俺でごめんね、と言うと、頬にキスをされた。 「誠也がなにをしたって愛してるよ」 完敗。 END
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