ポケットの指先に~彼岸の友を想いながら~

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照子さん、聞いてくれる? 正月からの痛手には、まだ続きがあるのよ。 一月はショックの波状攻撃だったわ。二十日に、また訃報が届いたの。 息子の養護学校時代の恩師が、登山中の滑落事故ですって! このお知らせも、年賀状の返礼としての寒中見舞いで、ご主人からのお知らせだったわ。 照子さんには分かると思うけど、養護学校ってところは、教師も父母もとっても密な付き合いをしていたから、ある意味家族同然みたいなところがあるのよね。 私、またダメージを受けたわ。 なんという年明けなのでしょう。 人生って、これからもこんな知らせを幾つも受け取らなくてはいけないのかしらって。 私、そんなことに耐えていけるのかしらって、恐くなってしまったわ。 同年配の友人と「残されるって辛いわね。もう、早い者勝ちだわね」なんて言い合って。 ブラックジョークだけど、ホントそう思ったわ。 それでも日々の暮らしでは、できるだけ沈み込んだ気持ちは胸の奥に押し込めて、元気に過ごしていたのよ。そのつもりでいたの。 それなのにね、ふと気がつくと、涙が流れていることがあるの。 ただ広告のチラシを見ていたり、掃除機をかけているときとか、そういうとき。 何も考えてもいなくって、ぼーっとしているときにね。 ふと頬に手をやると濡れているの。 ああ、私、押し込めているけれどホントは悲しいんだなって思った。 仕方ないわよね。
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