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足元で声を上げるボクを彼は抱き上げ、テーブルの上にのせる。
そしてボクの頭をかき回しながら言った。
「悪いな。面倒見切れなくて……。導師さまに合わせる顔が無い」
そんなことじゃないよ。ボクは君を心配しているんだから。
ボクは彼の顔を見上げた。
その思いが通じたのだろうか。
ふっと彼の表情がゆるんだ。
久しぶりの笑顔は、寂しげな苦笑いだった。
「もうすぐ冬が来る。雪が積もれば、しばらく休戦だ。少しは落ち着けると思う。……お偉いさんが冬季奇襲なんて馬鹿な作戦をたてなければの話だがな」
そんなことじゃなくて、今君に重要なのは寝ることだろ?
ボクは彼の服の袖に噛みつき引っ張った。
軽く手を上げてそれを振りほどくと、彼は頬杖をつきながらボクを見つめた。
「……ごめん。俺は自分勝手にお前から自由を奪ってしまった、な」
そんなこと、ないよ。もし、嫌だったら、いつでも逃げ出す機会があったじゃないか。
と言うより、どこか危なっかしくて、心配なんだよね。
大丈夫。ボクが君を待ってる。
……これから先、ずっと、待っていたかった。
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