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ふるえる君にあたしは何をしてやれるのだろうか
その少年はいつも体をふるわせていた。
あたしの心の中にその少年が入り込み、いつしかあたしの心をもふるわせるようになるとは夢にも思わなかった。
あたしの住む団地は、昭和の高度経済成長期に建てられた大規模なものだ、家賃は公営だけに格安。公団の抽選に当たり、住むことが出来てラッキーである。
流石に昭和の高度経済成長期に建てられたものであれば、経年劣化で所々が朽ちている。
それ故に平成の末に大規模リフォームを行い、ピカピカの新築のように建て替えられている。
あたしがこの団地に住むことになったのはこの時期で、グッドタイミングと言えた。
お隣さんもいい人で、ご近所トラブルも問題はない。
あたしは、一人ノンビリと休日を過ごしていた。休日昼間のテレビのしょうもないバラエティ番組の再放送をボーっと観ていると、インターフォンの音が鳴った。
この団地はリフォームこそしたが、インターフォンは昔ながらのチャイム式のままである。
あたしはチェーンロックをかけてドアを開けた。そこにいたのは、親子連れだった。
身なりがシックフォーマルな恰幅の良いオバサンと、その息子と思しき七五三を思わせる格好をした少年の二人である。少年であるが、男子キッズモデルを思わせる程に眉目秀麗かつ可愛い顔つきをしていた。
「はい? どちら様ですか?」
「ありがとうございます。お休みのところを失礼いたします。私、正しい聖書の教えを授けに来たものでして」
宗教勧誘である。これだけ大きな団地であればあって当然のもの。
だが、あたしは一切興味がない。お帰り頂こう。
「ああ、興味無いです」
すると、オバサンは少年の背中をトンと軽く押して前に出した。
少年は、全身を震わせながら雨の日に濡れた子犬のような目で、あたしの顔を上目遣いでじっと見つめてきた。
「あ、あの…… ぼ、ぼく…… いえ、わ、私達の宗教の教えが書いてあるパンフレットです。読んで、下さい……」
震える声だった。あたしはパンフレットを受け取らないのは可哀想に思い、手を伸ばしてしまった。
「あ、ありがとうございます」
すると、オバサンの方が再び前に出てきた。
「よろしければ、私の方で詳しい解説の方をしたいのですが。我らがお父様である神様のお話になります」
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