ふるえる君にあたしは何をしてやれるのだろうか

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ただでさえ、毎日会社でお局サマの井戸端会議のしょうもない話に付き合わされてウンザリとしているのに、せっかくの休日をこんな宗教オバサンに付き合う義理はない。 あたしはヤンワリと断りを入れた。 「いえ、結構です」と、言いながらドアを閉じた。リビングに戻った後、再びノンビリとし始めたのだが、あたしはあの少年の何かに怯えたように身を震わせる姿と、憂いを帯びた目が脳裏に焼き付き、ノンビリとすることが出来なくなってしまった。  パンフレットの内容であるが、斜め読みでも荒唐無稽の極み。 この世は悪魔に支配されており、神がその支配から人間を開放するために最終戦争を引き起こし、生き残るのは信仰する者のみ。 とどのつまり、信仰しない者は悪魔と共に滅ぼされると言うことであった。 「あほくさ」としか言いようがない。 正しい聖書の教えと言っていたからキリスト教かと思われたが、パンフレットを見てみれば書いてあった団体名は聞き慣れない宗派。カトリックでもプロテスタントでもないものだった。団体名をインターネットで調べてみたのだが、キリスト教系の新興宗教団体であることがわかった。創設も100年程度で宗教としては歴史が浅い。 その割にパンフレットには仰々しくも「我々こそが真に神に選ばれし団体である」と書かれていた。 使っている聖書も独自解釈が加わり独自の教義の書かれたものに様変わりしていることから「邪教」として扱われ、他のキリスト教系の団体からは宗派(なかま)とは認められていないとのことだった。 単なるカルト宗教と言う認識でいいだろう。 あたしはパンフレットをグシャグシャに丸め、ゴミ箱にポイと投げ捨てた。
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