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その親子であるが、休みの日になる度に家を訪問してきた。勿論、目的は勧誘である。
少年はその度に身をふるわせながらあたしにパンフレットを渡してきた。正直なところ「興味なんかない」と無碍に突き返してやりたいのが本音だが、少年の憂いを帯びた目とふるえる体を見ていると「可哀想」に思えてくるために、パンフレットを受け取ってしまうのであった。これを狙ってやらせているなら、この宗教は相当小狡い。
後日、お隣さんに聞いたのだが…… あの親子はこの団地では有名な「宗教親子」とのことだった。
母親の方は宗教勧誘を受けて自分から入信した「宗教一世」で、息子(少年)の方は生まれながらに入信していた「宗教二世」である。
休みの日には親子二人でこの団地やその近辺を回り勧誘しているのだと言う。訪問拒否をしたとしても、気が変わるかもしれないとして忘れた頃に何度も訪問を繰り返すのだ。「神と悪魔の最終戦争から人々を救わなければならない」と言う使命の元に動いているのだが、宗教に興味のない人からすれば有難迷惑というものである。
それに、お隣さんも詳しいことは知らなかったのだが何度か警察のお世話にもなっているらしく、たまにパトカーが来るとのことであった。
これだけ大きな団地であれば、一人や二人はこんな困った人もいるのも仕方ないかもしれない。
ただ、あたしは所謂「宗教二世」であるあの少年の身が心配になっていた。
会う度にいつも身をふるわせているところを見れば、心配になるのも当然である。
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