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少年は全身をふるわせながら徐に立ち上がった。団地の照明に反射した雪明りの脆弱なる光の元でもわかるぐらいに少年の体は色白、僅かに幼児体型が残り、丸みを帯びてはいるが肋骨が浮き上がり華奢で細身とも感じられる曖昧な体つきであった。
あたしは手すりの上から両手を伸ばし、少年の両脇に手を回して持ち上げた。
重さは感じなかった。事務椅子や会議用折りたたみテーブルを運び慣れているだけにそう感じただけかもしれないが、同世代の子供と比べても軽く感じるのだ。
あたしは少年を地面に下ろし、自分のコートを少年に着せた。少年はガチガチと全身をふるわせていた。
「冷たい…… 足……」
少年は裸足であった。ベランダにスリッパもないのか! 道も雪が積もっている。こんなところに下ろすなんてあたしは何をしているんだ! 何かを履かせたいところだが、今のあたしは履かせるものを持っていない。予備のスリッパでもあれば良かったのだが、ないものは仕方ない。
あたしは少年を抱き上げた。
「しっかり捕まってるんだよ!」
あたしは少年を抱き、遮二無二雪道を走り自分の部屋に帰った。
何をしたらいいかが分からなかったが、少年の体を温めることを最優先だと考えたあたしはリビングの暖房を入れ、雪に塗れ冷え切った少年の体をタオルで拭いた。
まずはお風呂だ。あたしの家の風呂であるが、毎日同じ時間にタイマー予約を設定してあるためにこの時間にはもう入ることが出来る。
少年が脱衣場に入ったことを確認すると、あたしは着替え一式の用意を行った。
着替えは、サイズはブカブカになるけど裏起毛のあたしお気に入りのスウェット上下。下着は…… 以前にあの少年と似たような歳の甥っ子が遊びに来た時に忘れていったものがそのまま置いてある。捨てる理由も特にないためにそのままにしていただけのものだ。
とりあえずの準備はこれでいいか。あたしは一旦落ち着くためにテーブルの椅子に深く腰掛けた。それから頭の中で現状の整理を行ったのだが、理由はどうあれ未成年の少年を家に連れ込んでいることに気が付いてしまった。
「やっば、誘拐じゃない。訴えられたらどうしよ……」
あたしは急に不安になり体の全身がふるえてきた。しかし、あたしは頬をパンパンと叩き体を強引に落ち着かせた。
「こんな雪降る夜中にベランダに一人裸で放置されていた少年を保護したんだ! 問題ない! 訴えるなら望むところよ! 警察だってわかってくれる!」
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