ふるえる君にあたしは何をしてやれるのだろうか

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真理くんであるが、身内は遠縁の叔父のみ。 その叔父も未成年後見人として法定代理権と養育監護権こそ持っているが、ほぼ他人だ。 愛情は皆無な上に宗教が絡んでいると知って、少年を厄介者扱い。引き取りも拒否されてしまった。 今回の事件を担当した弁護士からその話を聞いたあたしは真理くんの引き取りを希望した。 弁護士もその方がいいと考えたのか、叔父に承諾を取り付けてあたしが真理くんの養育監護を出来るようにしてくれた。 ネックはあたしが独身であることだったが、真理くんが「お姉さんと一緒にいたい」と希望を出してくれたことで、一緒に暮らすことになった。 簡単に言えば、あたしは真理くんの里親になったのである。 真理くんの宗教団体であるが、今回の事件で組織的な児童虐待が明るみになり世間の大バッシングを受けることになった。教祖を始めとした上層部は「事実無根」と否定し「信者が勝手に教義を解釈してやったこと」と梯子を外した。大量の脱会者こそ出たものの、灰汁(悪)も同然の上澄みたる信者は残っており、未だに存続されている。  真理くんはあたしの家で暮らすようになってから宗教を離れた「普通」の生活を送っている。 ただ、夜になるとあの寒い夜がフラッシュバックを起こすのか布団に蹲って、泣きながら身をふるわせることが多い。あたしに出来るのは「寒くないよ、怖くないよ」って慰めながら抱きしめてやることのみである。 あたしは真理くんの母親にああまでさせた宗教に対して怒りでふるえるばかりだ。そんなあたしの願いは、真理くんのようなふるえる子がふるえなくても良くなる世の中になってほしい。それだけだ。                             おわり
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