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「どうした。
すまないな」
娘を気遣う父からは時折、付け届けが贈られてくるのだが。
マレーヌ自身からは初めてだった。
「エヴァン王子に東洋から珍しいお菓子を取り寄せたのですが。
宰相様はお菓子はお好みでないようでしたので、お茶にしてみました」
いつもありがとうございます、と微笑み、渡される。
「そうか。
申し訳ないな。
いや、私も別に菓子が嫌いなわけではないのだが」
「そうなのですか?
では、あのときは我慢してらしたのですね」
と笑うマレーヌに、あのときとはいつだ? と訊いたのだが、マレーヌは何故か赤くなり、答えない。
なんだかわからないが、マレーヌが自分のために取り寄せてくれたというお茶の入った箱を胸に抱いていると、さっきまでのイライラが消えていく気がした。
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