神龍王の宝

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 高位生命体は、魔力を混ぜ合わせたたまごを生み出し次世代の命を繋げるから、人間などと違って、親兄弟という概念はあまりない。  人間の場合、血筋を重んじるあまり近親での婚姻が繰り返された弊害で遺伝子的な欠陥が生じ病弱な子が生まれたりすることもあるようだが、高位生命体の場合は、そういった懸念もなく、成人してしまえば、魔力の保有量や質、相性以外でたまごを生み出すために弊害となるものは少ない。  単体でたまごを生み出す……というか、たまごに戻り生まれ直すことができるような生命体だからな。  そんなわけで、客観的に見たならば、俺は兄弟と呼べる神龍が多いことになるんだろうが、俺自身にその実感は無いんだ。  俺の片親である神龍王は、まめに世界各地を飛び回っては、世界各地にいる我が子たちの成長を見守っていたようだが、幼龍時代の俺は、『竜の洞窟』と呼ばれるダンジョンでダンジョンマスターをしていたから、その地を離れるわけにはいかないと、本能的に理解していたからでもある。  ダンジョンの上空に浮かんで世界を見渡すことはできただろう。  ただあの頃は、魔王も鬼王も、人間にとっては、命令一つでスタンピード……魔物の大量暴走を引き起こせる危険因子でしかなかったし、力をつける前に不用意に人前に出れば、討伐されかねなかった。  だから、俺の両親が言っていた宝が何なのか、どこにあるのか、いつか探しに行けたらいいな……なんて夢を幼龍時代に抱いたんだ。  ダンジョン『竜の洞窟』は、我が子や子孫を守るために、歴代の鬼王神龍たちがキメラなどの強力な魔物なども残してくれていたから、人間たちからはS級ダンジョンに分類されていて、足を踏み入れる人間も少なかったし、俺のいた最上階まで到達できるような人間もいなかったから、俺は平穏に過ごせていたし、幼龍がダンジョンマスターでも、なんとかなっていたんだ。
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