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「郁斗さん!!」
「どうした?」
詩歌の声に先を歩いていた恭輔たちが振り返ると、郁斗が苦痛に耐えながら荒い息を吐いている。
「……だ、大丈夫、ちょっと、傷口が開いた……だけだから……」
「郁斗さんっ、血が……っ」
「だから言ったんだ。無理するからそうなる。小竹、急いで車回して来い! 美澄、急いで病院に連絡しろ」
「はい!」
恭輔に指示された二人は各々散って行く。
「郁斗さんっ」
「……っ」
「おい詩歌、お前、ただそうやって泣きながら郁斗の傍に居たって何にもならねぇんだぞ?」
「……っ、ご、ごめんなさい……私は、何をすれば?」
「これで汗を拭いてやれ。そして、ただ泣いてんじゃなくて、手を握って、大丈夫だと励ましてやれ。それくらい、お前にも出来るだろ?」
「は、はい!」
恭輔からハンカチを受け取った詩歌は言われた通り、苦しみ脂汗が滲む郁斗の額を優しく拭いながら、
「郁斗さん、しっかりしてください。私、言いたい事、沢山あるんです。聞いて欲しいんです……だから……」
手を握り、そう声を掛け続けた。
「……、大丈夫、これくらい……平気だから……心配、しないでよ……っ」
不安そうな表情を浮かべている詩歌を安心させようと郁斗は弱々しくも手を握り返し、大丈夫だからと口にするも、車を入口まで運び、電話を終えた美澄と小竹が再び部屋へ戻って来た時には、郁斗の意識は朦朧としていた。
それからすぐに病院に運ばれた郁斗は手術を受け、処置をしてもらい病室で眠っていた。
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