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「黛、彼女は銃を置いた。それは俺に向け直してくれ。頼む。詩歌は恐怖で気が動転してるだけなんだ」
「ったく、油断も隙もねぇ女だな。夜永、女の傍にある銃を遠ざけろ。そうすればこれはお前に向け直してやる。銃を握ろうとすれば、女を撃つ」
「分かった」
詩歌に銃口を向け続ける黛の指示通り、郁斗は彼女の傍に向かうと置いてあった銃を黛の方へ寄せた。
「これでいいだろ? これで俺らの周りには何も無い。窓はあってもここは十階。飛び降りたところで助からねぇ。お前が入り口側に居るから、この部屋からも出れねぇ。完全に逃げる事は不可能だ」
「そうだな、その通りだ。お前、やっぱり何も考えてねぇじゃねぇか! はは、笑えるぜ」
それでも何故か落ち着いている郁斗を不思議に思った詩歌が彼の服を掴んだその時、再び部屋にインターホンの音が鳴り響いた。
「何なんだ? 今日はやけに来客があるなぁ……」
そうブツブツ口にしながらカメラで確認すると、黛の表情は一気に青ざめた。
尋ねてきたのは多々良会の会長、蒼龍 行成。
まさか会長直々に出向いて来るとは予想外だったのか黛の動きは止まってしまい、その光景を見ていた郁斗の口角は微かに上がっていた。
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