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一体、何がどうなっているのだろうと考える間もなく、今度は赤髪短髪の男と比較的体格のいいスキンヘッドの男が二人同時に黒髪男に殴り掛かっていくも、
「はいはい、もういいって」
双方から交互に向けられた拳をいとも簡単に避けると、逆に二人の男のみぞおちに拳を入れて、殴り掛かっていった二人の方が崩れるように倒れていく。
「さてと、後はアンタだけだけど……どうする? そいつを置いて行くってなら、アンタだけは助けてやるけど?」
そして、詩歌を抱きかかえていた金髪ロン毛男のみが残され、黒髪男は彼に選択を迫った。
「ッチ! 分かったよ、女は置いてく!」
追い込まれて勝ち目がないと悟った金髪男は詩歌を降ろすと、蹲っていた男たちがフラフラと立ち上がるのを確認して、仲間たちと共に逃げるように去って行った。
降ろされた詩歌は力が抜けて立てずにその場にしゃがみ込んでしまったので、黒髪男はゆっくり近付いていくとその場に屈み、「大丈夫か?」と今にも泣き出しそうな詩歌の顔を覗き込みながら優しく声を掛けた。
「……あ、りがと……ござい、ます……」
「良いって。それよりさぁ、キミ、一人でしょ? 何でこんな場所に来たの? こんな物騒なとこ、女が一人で来たら危険だって分かるよね?」
「……す、すみません……気が付いたら、道に迷ってて」
「道に迷った? それで、何処に行こうとしてたわけ?」
「……その、特に、宛はなくて……ゆっくり休める所を探してて」
「ゆっくり休めるとこ? ホテルって事?」
「いえ、その……お金があまり無いので、ホテルは……」
詩歌の言葉に、男は思わず顔を顰めた。
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