プロローグ

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 彼がそう思うのも無理は無い。詩歌はお金に困っているようには見えず、荷物も小さなバッグだけで、旅行に来たという感じでも無いから。  だとすると考えられるのは、誰かから逃げているとか家出をして来たという訳ありな状況が一番しっくりくるだろう。 「ワケありなんだ? もしかして、男がDV野郎とか?」 「いえ、その……そういうのとは違うんですけど……ある人から逃げているのは、確かです」  そして彼の睨んだ通り、詩歌が誰かから逃げて来たワケありさんだという事がハッキリする。 「ふーん、逃げて来た……ね。ようするに行き場が無い訳だ。それじゃあさ、ひとまず俺の家においでよ」 「え……」 「行くとこないんでしょ?」 「は、はい……。でも……」  彼の発言に詩歌は戸惑った。助けてくれた良い人ではあるけれど、よく知りもしない彼を信じていいのか分からないから。  そんな彼女の不安を察した男は、 「平気だよ。何もしない。膝擦りむいてるし、とりあえず手当した方がいい。俺を信じて付いて来なよ」  どうにか詩歌に安心してもらおうと説得する。 (……不安はある、けど……ここで一人になるよりは、マシだよね?)  彼に説得されて彼女なりに悩み考えた末に、 「あの……よろしくお願いします」  助けてくれた紳士な彼を信じて付いていく事に決めた。
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