「深く沈む」

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「深く沈む」

 いつからだろう、人と目を合わせられなくなったのは。  いつからだろう、相手の顔ですら見られなくなったのは。  いつからだろう、人と話すのが苦しいと感じたのは。  いつからだろう、人を怖いと思い始めたのは。  耐えて、耐えて、絶えて。  何もかも嫌になった私は、私を壊しました。                                               *  頑張ろうと意気込んで入った鳥籠の中は、優しいと諦めで成り立っていた。  その鉄格子の中の生活に、苦しい、辛い、悲しいと、負の感情ばかりが募っていった。  描いていた理想とは淡く、これが現実なんだと、受け入れた。  その果てに、味覚障害になった。  食べ物の味が薄く感じたり、味がしなかったり、変な味がしたり。一番驚いたのは、野菜を食べているのに、唐揚げの味がしたことだった。お肉の味と脂っこさを感じて気持ち悪くなった。吐きそうになった。泣きたくなった。  食べることが大好きなのに、それを奪われ、食欲が失せた。だが、食べなくては身が持たない。大好きだった食事が事務的な作業になった。  これから先も、この生活が続くのかと思うと、息をするのが苦しくなった。  いつかはきっと、なんて言葉を何度も口にした。  泣き寝入りをする日々に、明日が来ないことを望んだ。  何をしても満たされない心に、嫌気がさした。  自分で選んだ道なのに、この先の未来が霞んで見えなくなった。           *  車窓から見える、大空を飛ぶ鳥に憧れた。  休憩室でSNSで流れてくる、優雅に暮らす飼い猫を羨ましく思った。  どうしたら、楽になれるだろうか。   どうしたら、自由になれるだろうか。  どうしたら。どうしたら。どうしたら。どうしたら。どうしたら?  私は、どうしたらいいの?  私は、どこへ行けば自由になれるの?  壊れた私は、思い悩む毎日に、せめて夢の中だけでもと、縋るように眠った。
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