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ぼくはどう言われようと構わない。この子供たちにも父親や母親はいるんだ。大人になった子供たちが雪合戦に参加して二度と会えなくなると知ったらどんな気持ちになるんだろう。きっと二度と雪合戦をさせたくないし、雪だるまを立てたくないと思うだろう。ぼくの一言で子供たちを不幸に巻き込むくらいなら、ぼくは最後まで詐欺師になりきるほうが百倍マシだ。なによりぼくは、この三名の自由な発想を尊重したかった。
「フロスティ先生も、お父さんやお母さんからそう教わったの?」
「そうだよ。だから、親父からは特に厳しく教えられた」
「先生のお父さん、そんなに厳しい人なんだ。僕たち見た事ないけど」
「雪だるまはこの国のひとにとってはもう一つの家族だ。雪だるまを乱暴に扱う事は家族を乱暴に扱うことと同じだ。だから丁寧にきちんと作れってね」
「もう一つの家族か」
「お袋はそんなぼくを見兼ねて、もこもこの手袋を編んでくれたんだ」
「そうなんだ。あ、私のうさぎさんが、今、動いたっ!」
エリサが驚いたように声をあげた。雪だるまのうさぎが、後ろ脚で雪を蹴り上げながらエリサの回りをピョコピョコと駆け回っている。作った雪だるまに魂が宿ったというのか。驚いた。こんなこと父親や母親からも聞いたことなかったけれども。
「ぼくもこんなの初めてだ。エリサちゃん、触ってみてもいいかな」
雪だるまのうさぎをそっと抱いてみる。もふもふした白い体毛ごしでも暖かい体温を感じる。それに、心臓がどくんどくんと跳ねているのが掌〜伝わって来るし、ずっしりとした重さの体から必死に蹴り上げる後ろ脚の力で、両腕を弾かれそうだ。
「凄い、まるで本当に生きてるみたいだ。エリサちゃん、よく頑張って作ったね、凄いよ!」
「雪だるまのうさぎさんに命が宿ったあ!」
エリサは自分が作ったうさぎが動いた事に肝機能声をあげて、大切そうにギュッと抱きしめた。
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