白い墓標に弔いを

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 「俺のきつねも動いた!」  ハントも生命を得て動き始めた雪だるまのきつねに歓喜した。ふさふさした尻尾に尖った鼻、それから白い毛をした動物は神さまの遣いだと言われているが、白い毛をしたキツネはなんとも神々しく見える。ワンワンと高い鳴き声をあげながらエリサのうさぎを追いかけている。  「こら、エリサのうさぎをいじめちゃ駄目だろう!」  「僕のネコも、あれ動かないけどどうしたんだろ?」  クレバスはその場で動かなくなったネコを眺めながら、作りかたを間違えたのか? 何か足りなかったのか? と悩んでいる。ぼくが見ていた限り、作りかたを間違えた訳でも何か足りない訳ではなさそうだが。  「どれ、触ってみてごらん?」  「うん、あ、あったかいっ! でもぶるぶる震えてるよ」  「寒いのが苦手なんだろうね。温かい所に連れてってあげたらリラックスして動くと思うよ」  「なんか不思議だね先生、雪だるまなのに寒がりだったり、暖かかったり」  「先生もすっごく不思議だよ」  「でも、お父さんやお母さんが言ってた事は本当だったのかもしれないね」  「そうかも知れないなあ」  「ねぇ、たくさん雪だるま作れば、雪だるま作るのもっと上手になれるの?」  「確かにね、練習は必要だ」  たくさん作れば、雪だるま作りは上達するかも知れない。しかし、雪だるまは生命を持っているし、たくさん作ったぶんの世話をしなくてはならなくなる。クレバスたちがそれだけの世話を出来るだろうとしても時間は必要になるが、ギブアップしてしまわないかがぼくは心配だ。作った雪だるまとお別れすることになれば、この三名はきっと悲しむだろうな。家族と別れてしまうのが悲しいのはぼくもわかる。厳しい父親だったけど亡くなった時は泣いてしまったから。   「まずは最初に作った一匹から大切に世話をしてあげよう」  「わかりましたっ!」
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