白い墓標に弔いを

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三  ハント、エリサ、クレバスはシャルベットに降り積もる雪のように、少しずつ作った雪だるまの接しかたを覚えて来た。  「なあエリー、雪だるまの動物って何を食べるんだろう?」  「ハント、もともとが雪なんだから、雪を食べて大きくなるんじゃない?」  「僕のスヴェンはネコだから少しあったかいものを食べさせてあげたいよ」  お互いをニックネームで呼び合い、雪だるまの動物に名前をつけるなど、三名の教え子たちと雪だるまたちの関係も、徐々に親展していってるようだ。  「先生、雪だるまの動物ってどのくらいまで生きていられるんでしょうか?」  「先生が作ってた雪だるまは、雪解けには形が崩れ始めるから、作り直して別の場所に映し変えるけど、涼しい場所を用意してあげたら長生き出来るんじゃないかな」  雪だるまの動物についてはぼくもよく知らない事が多い。父親がいれば教えてもらうことは出来るんだろうけど、今はもういないし、雪だるま作りの事はぼくの父親と祖父以外の人は知らない。なので、亡くなる前に父親から教わった想い出を頼りに、教え子たちに伝えていく事にした。   「雪だるまは雪をたくさんつければつけるほど頑丈で大きなものになるんだ。しっかり雪を食べさせて大きくすれば雪解けの時期を過ぎても生きていられる」  「それでも溶けてしまったらどうしたらいいですか?」 「溶けてしまった箇所に雪を集めて修繕するのが通常のやりかただけど、やはり全体的に雪を集めてバランスを保ったほうが良い」  「永久に溶けない雪だるまは作る事は出来ないんですか?」  「永久に溶けない雪だるまは、残念だけど作れないんだ。いつか溶けてなくなってしまうものだから、ずっと一緒にいる事は難しい」  「じゃあ、雪だるまが溶けてなくなったらここで作った想い出も消えて無くなってしまうんですか?」  「それは無くならない。ハント、エリサ、クレバスが覚えている限りずっとね。それにもし雪だるまが溶けて無くなっても、また会う事は出来るんだ」  「本当にまた会えるんですか?」  「その為に三人ともここで雪だるま作りを学んだんだ。でも一つだけ注意しておくと、作り直せるからと言って乱暴に壊したりしないで欲しいんだ」
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