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白い墓標に弔いを
一
曽祖父から聞いた話。
ぼくの住むこの国は昔、大規模な雪合戦があったという。雪が多いところや雪の質がいいところに圧倒されて、ついに負けてしまったけれど、大勢の人が雪の中に倒れていった。そんな人たちの魂を慰める為にぼくの国は雪だるまを作ったと言われている。
「雪だるまは死者の魂を鎮める為の墓である」「ご先祖さまの魂がここで眠っている」「災いを引き受けて下さる御守りである」「我が子の成長を願う気持ちを叶えて下さる」など色々な言い伝えがあるが雪合戦で大多数のひとがなくなった為に、雪合戦の生き残りである曽祖父が雪だるま職人を引き受ける事になった。
雪合戦で武功をあげた軍人や、国の為に色々なものを作って活躍した人は大きい雪だるまを、雪合戦で亡くなった兵隊は中くらいの雪だるまを、小さい子供は小さい雪だるまを、家族や兄弟がいるならずっと一緒にいられるように同じ場所に。その数は数千、数万個の雪だるまになったという。
そんな曽祖父はこう呼ばれている。
「雪合戦を生き抜いた冬将軍」「血も涙もない鬼ウェンディゴ」複雑な気持ちで雪だるま職人を続けて来たが、百一歳で他界して、祖父が仕事を継ぎ、ぼくの父親にバトンタッチされた。その父親も雪だるま職人を一人でやって来た為に無理が祟り倒れてしまう。
「雪だるま職人の仕事を、お前に引き継いで欲しい、デック」
父親のジャック・フロスティはそう言ってぼくに雪だるま作りの全てをぼくに叩きこんだ後、老衰で亡くなった。なので今は、ぼくが雪だるま職人だ。
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