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授業の終わりを告げるベルが鳴り、静かだった教室が一気に雑音の渦に包まれる。
次の授業は家庭科室に移動だ。机に広げた教科書とノートをまとめて抱えると立ち上がる。
いつも行動を共にする親友の方を見ると、彼女はまだ準備ができていないようだった。
「廊下で待ってるね」
私は彼女に声をかけると、一足先に教室を出た。
廊下の窓側の壁にもたれかかると、首の後ろに窓の隙間から吹き込む冷たい空気があたる。
私は小さく身震いすると、制服の上から羽織ったカーデガンの袖を指先まで引っ張った。
今年の冬はいつもより寒い。冬が来るたび、そう思う。特に今日は朝からぐんと冷えこんでいて、本当に寒い。
寒がりな私は、ついに今年こそは冬を乗り越えられないんじゃないかと毎年本気で心配だった。
窓からの隙間風の冷たさに耐えかねて壁から背中を離す。何気なくふり返って窓の向こうに視線を向けたとき。
「あ……」
私の口から誰にも聞き取れないくらいに小さなため息が零れた。
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