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いつ降り出したのだろう。窓の外で雪がちらちらと舞っている。大粒で白い、綺麗な雪だった。
私の住む町で、冬に雪が降ることは珍しくない。だから雪が降ってもそんなに驚かないし、そんなにはしゃいだりもしない。
でも今私が見ているのは、今年になって初めて降る雪だった。
どおりで朝から冷え込むわけだ。このまま降り続けると、夜には積もるかもしれない。
下校のときに雪が積もっていたらと思うと、少し憂鬱な気持ちになった。
もう一度ため息をついて、窓に背を向けかけたそのとき。ひとつの影が、私の視界に入ってきた。
窓の向こう側。中庭を挟んだ向かいの棟の校舎のベランダに、雪を見ながら子どもみたいに友達とはしゃいでいる『彼』がいた。
きっと、もっと遠くにいても。たとえ後ろ姿だったとしても、私には彼のことを見つけられる自信がある。
もう二年間ずっと、見ているだけの片想いをしている。私の好きな人。
思わず窓に手を伸ばすと、触れた指先から冷え切ったガラスの冷たさがじんと伝わった。
窓の向こうに見える彼は、ベランダから身を乗り出して雪に手を伸ばしている。ひらひらと舞い落ちる雪の粒は、伸ばした彼の手の平に落ちては消えていくようだった。
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